Blog
金井一郎先生の作品のような教師になりたい
2026/10/11
いつも執筆で通っているカフェで、光と影をテーマにした造形作家、金井一郎先生の個展が開かれていました。知ってすぐに、見に行きました。
照明を落とした部屋に、光の箱のような作品が並んでいます。月、雲、窓辺の猫、木の葉。どの作品も、内側からこぼれる光で、静かに浮かび上がっていました。小さな馬の置物が、作品の間にそっと置かれていて、それもまた優しい景色でした。
何度も見返してきた一冊
私には、ずっと大切にしている一冊の絵本があります。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』(ミキハウス)です。絵を担当されているのが、金井先生です。
黒い紙に針で無数の穴を開け、後ろから光を当てる「翳り絵(かげりえ)」という技法で、銀河の世界が描かれています。針の穴からこぼれる光の点で描かれた絵は、とても優しい絵です。
この絵は、賢治の言葉を決して邪魔しません。読む人一人一人の読みも、邪魔しません。いい意味で、描き手の「色」を主張していないのです。
教師は「薄い色」でいる
2027年2月に出版する本の中で、私はこの絵本のことを書きました。教師の「色」についての話です。
私も若い頃は、自分の色で教室を染めようとしていました。しかし今は反対に、子どもたちが自分の色を出しやすいように、教師である自分はできるだけ「薄い色」でいることを心掛けています。
教師が自分の色を強く出し過ぎると、子どもたちの色は見えにくくなってしまいます。教室の主役は子どもたちです。教師は、子どもたちの色を引き立てる、金井先生の挿絵のような存在でありたい。原稿には、そう書きました。
ご本人に、お伝えできた
会場には、金井先生ご本人がいらっしゃいました。思い切ってお声を掛け、作品を一つ一つ見ながら、お話をさせていただきました。
そして、ずっと伝えたかったことを、お伝えしました。
「先生の作品のような教師になりたいと思って、本に書かせていただきました」
そのときにいただいた言葉は、私の胸の中に大切にしまっておきます。
本の中で書いた言葉を、書いたご本人に、作品の前で直接お伝えできる。こんな偶然があるのかと、今も不思議な気持ちです。
光は、主張しなくても心に届く
作品の前に立っていると、改めて感じました。強く照らさなくても、光はちゃんと見る人の心に入ってくる。むしろ、静かな光だからこそ、見る人は自分の思いを重ねることができるのだと思います。
教室も同じです。教師が前に出過ぎなくても、子どもたちは育ちます。教師の役割は、一人一人の中にある光が自然にこぼれ出てくるように、そっと場を整えることなのだと思います。
金井先生の作品のような教師になれるように。これからも、教室に立ち続けます。